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新型コロナが問う日本と世界 「幸福度」世界一 フィンランドから何学ぶ 個人尊重 ゆとりある社会に 『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』の著者 堀内都喜子さん

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(写真)ほりうち・ときこ 長野県出身。フィンランドのユバスキュラ大学大学院でコミュニケーションを専攻し修士号取得。帰国後は都内のフィンランド系機械メーカーに勤務する一方、ライター、通訳としても活動。2013年からフィンランド大使館広報部でプロジェクトコーディネーターとして勤務。その他の著書に『フィンランド 豊かさのメソッド』(集英社新書)。

 国連が毎年発表している「幸福度ランキング」で3年連続世界一になったフィンランド。新型コロナウイルスの感染対策の現状とコロナ問題が問う社会のあり方について、『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(ポプラ新書)の著者、堀内都喜子さんに聞きました。(伊藤紀夫)

 5月20日時点での感染者は6443人、そのうち死者は304人です。人口は約550万人ですが、いま、感染者は1日40人前後で、減少傾向にあります。3月16日に非常事態宣言を出し、3月19日から国境を封鎖しましたが、制限は少しずつ解除されてきています。

 PCR検査は当初は検査体制が整わず、一時は韓国の協力を得て難局をしのぐ状況でしたが、検査体制を強化して、疑いのある人は本人が希望すれば検査を受けられるようになりました。これまでに15万6200人が検査を受けています。

 学校は閉鎖されていましたが、5月14日から再開されました。閉鎖されている間は、オンラインによる遠隔授業が行われました。レストランもテークアウト以外は閉じていて、6月1日からナイトクラブなどを除いて徐々に解除される見通しです。

法整備と運動と

 今回のコロナ禍では、働き方も問われました。フィンランドでは、在宅勤務を週に1度以上している人は3割いましたが、感染防止のためテレワークに移行する人が増え、6割に広がりました。就労時間や場所に柔軟性があるのは、1996年に施行された法律の影響が大きく、今年1月の法改正で、就労時間の半分は、労働者と雇用主が相談して自由に決められるようになっています。

 フィンランドでは、男女平等で、ともに働き、ともに子どもを育て、仕事と家庭を両立させる、さらに森と湖の自然に親しみ、スポーツや趣味、学習を楽しむなど、「ワークライフバランス」を大切にしています。在宅勤務も、そのための柔軟な働き方の一つです。午後4時には仕事が終わる、残業はほとんどしない、夏には1カ月以上の休みを取る。環境や地域に違いはあっても、教育や福祉サービスの機会が平等で、最低限の生活が保障されている。その安心感、ゆとりある生き方が「幸福度ランキング」世界一の背景にあると思います。

 労働組合の組織率は65%で、その力は強く、賃金や働く時間など労働条件の交渉は毎年しています。ストライキもしょっちゅうで、公務員である保育士のストライキもあり、交通機関のストライキで電車が止まるのは日常的です。昨年は郵便関係の労働組合がストライキを行い、郵便が16日間届きませんでした。こうした運動が賃金アップや労働条件の改善につながっています。

休養とってこそ

 フィンランドの仕事文化を語る上で欠かせないキーワードは「ウェルビーイング」です。身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する言葉で、休みをきちんと取って労働環境を改善して心身とも健やかな状態でこそ、仕事の効率も上がるという考え方です。

 AI(人工知能)、デジタルを活用した働き方が広まる時代には、個々に違ったアイデア、自由な発想が求められます。時間を短縮して仕事をし、自由な時間にリフレッシュして学び直し、より良いものを生みだしていく「個人を重視した働き方」が必要になってきます。

 コロナ禍は、自宅勤務・テレワークの拡大に見られるように、そういう働き方を加速させている面もあります。でも、同僚との意見交換もしづらくなり、さびしいとか、孤立や疎外感をもつ人もいます。そこで多くの企業では、オンラインで各家庭をつないでコーヒー休憩(法律で決まっていて勤務時間に含まれる)を取ったり、エクササイズ休憩でストレッチをしたりしています。

男女平等が力に

 コロナ対策では、ジェンダー平等社会の大切さを実感しています。昨年12月に首相に就任したサンナ・マリンさんは34歳の女性で、五つの政党の連立政権です。この五つの政党のリーダーは、すべてが女性です。閣僚は女性が12人、男性が7人、平均年齢は47歳です。女性の国会議員は46%で、ほぼ半数を占めています。

 今回の危機的な状況の中で、政府は試行錯誤はありますが、着実にコロナ対策を進めています。新聞の世論調査ではマリン首相のコロナ問題への手腕について、83%が「満足」「非常に満足」と答えています。

 彼女は国民にわかりやすい言葉で的確に伝え、等身大で親しみやすい身近な存在として共感を呼んでいます。新しく手ごわい感染症への対策は難しく、ときには間違えたり、うまくいかないこともありますが、その都度、真摯(しんし)に謝って改善策を示しています。そういうオープンな姿勢が多くの国民から好感、信頼感を得ています。

 マリン首相は、教育相、科学文化相(いずれも女性)とともにテレビで、「いつになったら、学校にいけるのか」など不安を抱える子どもたちに「みなさん、がんばっているよね。コロナに感染しない、感染させないようにして、しっかり勉強してください」と呼びかけ、オンラインで質問に答えました。

 彼女は経済的に恵まれない家庭に生まれ、幼い頃、母親はアルコール依存症の夫と離婚し、その後のパートナーは女性という環境で育ちました。社会福祉と平等社会の大切さを身をもって体験している人です。こういう女性が首相になれることを国民の多くは誇りに思っています。今回のコロナ禍でも、女性と男性が平等で公平に能力を発揮してこそ、バランスが取れた政治ができることを実感しています。

 日本でもコロナ禍は、いろいろなことを考え直し、変えていくチャンスではないでしょうか。一人ひとりが人間らしいゆとりを持った働き方、生き方ができる、ジェンダー平等で女性が差別なく活躍できる、いざとなったら最低限の生活が保障される…。そういう社会に変えていくことが、政治に信頼感を高めることにつながるのではないでしょうか。

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