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シリーズ共闘の力(5) 政権構想を示すとき

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『しんぶん赤旗』日刊紙連載記事の第5回です(8/25付)。

「連合政権構想への話し合いの提案に、納得して展望が持てた。共通政策が13項目になって、ほとんど私たちの暮らしにかかわることは共通政策になっています。もう、政権構想がつくれない方がおかしいというくらいまできたんじゃないかなーって思います」

信頼度が変わる


(写真)志位和夫委員長の講演を聞く人たち=8日、東京都中野区

 こう語るのは、神奈川県の「よこすか・みうら市民連合」事務局の岸牧子さんです。日本共産党創立97周年記念講演会(8日)に参加し、志位和夫委員長の「連合政権に向けた話し合いをはじめよう」との呼びかけをじかに聞きました。志位氏は講演で、参院選挙後に「日経」が行った世論調査(7月26~28日実施)で、投票に行かなかった人の「理由」のトップが「政治や暮らしが変わると思えない」(29%)だったとし、安倍内閣不支持の人たちの中でも「政治や暮らしが変わると思えない」の比重が高かったと指摘。政治を変える本気度がビンビン伝わる野党共闘へと発展することが強く求められているとして、「安倍政権に代わる野党としての政権構想を国民に提示することが不可欠」だと述べました。

 岸さんは、「政権をとった後、どうやって実現していくのかを示したら、もう全然信頼度が変わる。みんな安倍さんは嫌だけど、『野党が頼りないから』と、投票先に困っています。『あ、そういうふうに政権までつくっていけるのか』って思ったら、投票率も上がるし、立憲野党への信頼がものすごい票になると思います」と語ります。

 「市民が野党をつなぐ埼玉の会」共同代表の野田静枝さんも「連合政権合意はぜひ必要」ときっぱり。「きちんと旗印を立ち上げないと、市民に手をつないでくださいとは言えません」「安倍政権を退陣させないといけません。憲法を一番守らなければならない人が、この憲法は嫌だと言って改憲しようとしている。絶対に許せない。政権を倒すという以上、代わりの政権構想を示すべきです」と語ります。

 神奈川の岸さんは「野党が結束していくためにも、私たち市民の側が大きくなる。いまの選挙だけの共闘ではなく、政権構想、連立政権をつくるところまで考えるのは、私たち市民の側も、大きくなることでそこにつながる」といいます。

民主主義の危機

 東大の宇野重規教授(政治学)は、「今回投票率が40%台まで落ちたことは、この国の民主主義の危機だ。2人に1人が投票しない選挙をもって民主主義と言えるのか」と指摘。「政治の座標軸を一日でも早く明確化し、それらの選択にどんな意味があるかを早く示さないと、投票率は際限なく下がって行く危機的な状況だ」と強調します。

 宇野氏は「日本の民主主義は、野党が共闘する中で、政治にどんな選択肢があるかという座標軸を再建することにかかっている」とし、野党が安倍政権に代わる政権構想を示すことが急務とします。

政権合意「覚悟問われる」


(写真)志位和夫委員長の党創立記念講演を聞く人たち=8日、東京都中野区

 志位委員長は記念講演で、安倍晋三首相が参院選中に全国73カ所で民主党政権時代に触れ「あの時代に逆戻りさせるわけにはいかない」と野党共闘攻撃を行ったとし、こういう卑劣な攻撃への断固とした回答として、連合政権構想を示す意義も訴えました。

 志位氏は「いま市民と野党の共闘が目指しているのは、かつての民主党政権の復活ではありません」「共闘が目指している政治は、『市民連合』との13項目の『共通政策』が示している政治」だとして、安倍首相による「筋違い」の「いわれなき攻撃」に厳しく反論しました。

草の根が支える

 元外務省国際情報局長の孫崎享氏は、志位氏の主張に「その通り」と膝をたたきます。

 「安倍首相は、民主党政権の時代に戻るのか、共産党の主張に与(くみ)するのかという攻撃を繰り返している。国民への影響もあり、これからもやってくる」と指摘。「それに対し、立場をさまざまにする市民と野党が、みんなで確認した一致点に基づいて、その政策を実現する政府をつくるという主張は根本的に重要だ。その角度から、政権論を堂々と主張することにおおいに賛同する」と語ります。

 五十嵐仁法政大名誉教授は、かつての民主党政権と野党共闘が目指す連合政権の相違について「民主党政権は一時的な風で、上だけの政党の連携でできた。草の根で支える十分な基盤がなかった。新しい野党連立政権は、各選挙区、地方、地域で市民と野党の草の根での連携、協力、信頼が営々として築かれたその上にできる連立政権だ」と強調します。

 そのうえで五十嵐氏は「重要なことは、共闘の機関車としての共産党がここに加わっていることだ。建物でいえば鉄筋コンクリート入り。共闘を追求するという点でも、市民との約束を守るという点でも、決してぶれない鉄筋です。草の根の共闘というしっかりした土台の上に、鉄筋入りの建物が立つ。民主党政権に問題があったとすれば、その教訓も踏まえて、市民と野党の共闘が発展している。民主党政権そのものとは全く違う」と語ります。

最大公約数詰め


(写真)香川革新懇学習交流会であいさつする小川淳也衆院議員=10日、高松市内(香川革新懇提供)

 政界からも強い反応が。16年参院選で日本共産党の田辺健一氏を野党統一候補とした香川県で、旧民進党当時の県連代表として尽力した小川淳也衆院議員(無所属)は、香川革新懇の学習交流会(10日)で「野党間での最大公約数を詰めていく政権構想会議」の立ち上げについて発言しました。

 小川氏はその趣旨について「志位委員長が提起されたことは、本来野党第1党が呼びかけるべき課題だ」と指摘。「安倍首相が選挙に動いてからでは遅い。私たちの覚悟が問われるし、有権者にも見透かされる」と語ります。

 これまで、旧民進党側からは、連立政権合意は、日米安保体制の評価など、基本政策に隔たりがある中で難しいとされてきた経緯もあります。

 小川氏は「政権合意の難しさは当然として、そこへの疑問を払しょくするような議論ができるかどうかだ。疑問や不安に対し、迫力をもって乗り越えられるような議論をどうするか。そこも私たちの覚悟が問われる。異なる歴史を背負う者同士が、新しい歴史をつくっていく。それぞれのサイドの見識も問われる」と語ります。

 連合政権構想の呼びかけは、新たに政治を根底から揺り動かし始めています。

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